灰みの空いろ日記

乱調日々書留

「春の嵐が過ぎた朝の野良猫」(2023/3)

ひどい雨の夜が明けた朝、
汚れた毛並みの野良猫ハッチが裏道を通り過ぎるのを見かけ、
「あ、ハッチ!」と後ろから声をかけると、
ハッチは、不満そうに立ち止まってゆっくり振り向き、
疲れたような目でこちらを見た。
もちろん彼は自分が「ハッチ」と勝手に呼ばれていることなど知りもしない。
なのに呼びかけに応じたような気がして、
なんだか嬉しくなって
「おもてにお周り!ご飯をだしましょう」と言うと彼は、
重たい足取りだったがグルッと先回りしてやってきて、私を待っていた。
ひどい雨翌朝の野良猫は
ひどい毛並みで、疲れ切った表情で、
もしっかりと朝食を召し上がって去っていかれた。
帰る彼の背中にもう一度
「ハッチ!」と声をかけたが、
今度は振り返ることはなく、ゆっくりと塀を乗り越えていくのだった。。。。。。
 
という投稿を去年の今頃、下書きしたまま放置していたのをさっき見つけた。
一年越しに公開に回すのだが、
当のハッチは、ここ半年近く見かけていない。半年前に、背中と顔にひどい傷を負っていたのに出会ったきりだ。カラスにやられたのか鋭くえぐられたような傷もあった。
食事を提供しようとしたが、くるっと背を向けて去ってしまった。
あれきりなのだが、たまにハチワレを見かけると彼じゃないかと追ってみたりする。
あの日、ひょっとしたら別れの挨拶に来てたんじゃないかとも思えて、時々空を見上げてみる。